やる気ゼロ証券マンのメモ帳

やる気ゼロの証券マンです。仕事の息抜きに。

金融商品入門(株式編②)

 前回の記事はこちら。

karmand.hatenablog.com

 昨日の記事に引き続き、今日も株式の基礎知識について説明していきます。

 

③株式の特徴

 昨日も触れましたが、一般に株主はその持ち分に応じて会社の経営に関して株主総会で口を出す権限を与えられます。株主総会とは国家で例えるなら国会のような機関です。とはいえカネさえあれば誰でも株主になれるという仕組み上、全株主が会社の舵を取っていく能力を持つという状況はまず有りえませんし、全員が好き勝手に経営できるのならば船頭を多くして船山に登るというのが明白です。よって日々の経営は会社の行政組織、内閣たる取締役会に任せておき、重要な決定には国会である株主総会を通じて株主の声を反映させるというのが株式会社のルールです。この仕組みを「所有と経営の分離」と言います。株主は出資した金額(=株式を取得するときに払い込んだ金額)以上に会社や会社の債権者から金を請求されることはなく、最悪出資先が倒産したとしても払い込んだ金額が0円になってしまう[1]だけで済みます。これを「有限責任」といいます。小規模な企業の場合は出資した額を超えていくらでも金を請求されうる「無限責任」という仕組みを取る企業形態も選択でき、①で触れた持分会社の一部は無限責任です。

 

④株式と時価総額

 先ほど「株主はその持ち分に応じて会社の経営に関して株主総会で口を出す権限を与えられ」ると説明しました。つまり株式を多く持っていれば持っているほど、多数決で議決を行う株主総会において主張を通しやすくできるということです。極端な例で言えば、ある会社の株式を半数(=51%)以上取得すると、その会社の決定権を乗っ取ることができます。会社を完全に乗っ取りたければ100%の株式を取得してしまえばいいわけです。

 以上の観点から、企業の株を全て買い集めるということはすなわち「会社を丸ごと買う」行為であると換言できます。したがって、ある企業が発行する全ての株式の合計値段はまさしく「会社の値段」であり、これを「時価総額」と呼びます。改めて説明するまでもありませんが時価総額は株価×発行している株式の総数で計算できるため、絶えず変動しています。これが「時価」という言葉の意味するところです。

 日本で最大の企業であるトヨタ時価総額は約20兆円、東証一部上場企業の時価総額合計は600兆円です。2021年現在世界最大の企業はアップルでおよそ200兆円、次点はサウジアラムコでおよそ180兆円、その次はマイクロソフト、アマゾンと米国企業が続き、トヨタは大体40番目くらいに来ます。30~40年前には上位10位に日本企業がずらりと並んでいたのですが、現在はアメリカ・中国の企業で占められています。ちなみに日本のGDP(日本国内で1年間に作られる全てのモノ・サービスの値段の合計)は約500兆円です。こうした数値感覚も併せて持っておくと、大きな数字を聞いた時のイメージが持ちやすく、便利です。

 

⑤株価とは

 先ほどからしれっと「株価」という単語を使っていますが、これは企業の株式1株の値段です。株式は取引所(以下単に「東証」といいます。)において日々競りの仕組みで売買がされていますので、買いたい人がたくさんいれば株価は上がり、売りたい人がたくさんいれば株価は下がっていきます。どういった要因で上がる・下がるのかという点については無数の説明が可能ですが、一般に「いい決算が出た」とか、「社長が薬に手を出したのがバレて逮捕された」とか、企業に関するポジティブ・ネガティブなニュースなどに反応します。また、決算などの確定的な数字が無くとも「A社がコロナウイルスに有効とされる薬の治験に着手した」といったな噂レベルのニュースが出ただけでも株価が上がっていくことも良くあります。

 また、株式とは会社を切り売りしたものに過ぎないことから、当然発行する会社が無くなれば価値は0になります。よって天災や戦争、テロ、ちょっと前の話題で言えばアメリカと中国の貿易戦争といったリスクが発現した際には投資家たちがこぞって現金化したがり、個別企業の事業とは全く関係なくあらゆる企業の株式が軒並み売られることもあります。こうしたリスクのことを「地政学的リスク」といい、これまた株価が下がる原因の一つです。株価が動いているのにハッキリとした原因がわからないようなとき、困った新聞記者が株価の動きを説明するのにも便利な言葉です。

 株価が一日で急激に上がったり下がったりすると投資家にとっては大きな痛手となることがあります(何で上がっても困るのか、ということは深く考えず、今ここでは「そんなものか」ととりあえず納得しておいてください。下がったら困る人もいる裏で、上がったら困る人もいるんだな、くらいのイメージを持っておければ大丈夫です。)。そのため東証では一日に動ける株価の上限・下限をそれぞれ設けており、これをそれぞれストップ高・ストップ安と言います。ある会社の株価がストップ高になっているのなら余程ポジティブなニュースが出ていることが多く、ストップ安ならばその逆となります。例えば2016年末に東芝粉飾決算をしていたことが明るみに出たときはストップ安になりました。さて、この他にも「株価」として言及されるものに「日経平均株価」やアメリカの「ダウ平均株価」などの「株価指数」があります。

 株価指数については説明が長くなりますので、また別の記事で解説することにします。

 次の記事はこちら。

karmand.hatenablog.com

 

[1] 倒産する企業の株価は0円になります。